自宅でお湯を利用するためには、いくつか手段がありますが、そのうちの1つとして湯沸かし器があります。自宅に湯沸かし器を導入する際に気になる給湯器との違いや、湯沸し器を選ぶときの注意点を解説します。湯沸かし器を扱う代表的なメーカーの特徴や設置工事など実際に検討するにあたって必要な情報についても触れています。

1.湯沸し器とは?給湯器との違い

湯沸かし器と似た製品に給湯器があります。しかし、それぞれどのような特徴があり、何が違うのかまでは、よく分からないという方も多いのではないでしょうか?実際に湯沸かし器を調べようと思って検索していても、いつの間にか給湯器の検索結果が表示され、誤解を生じたり必要な情報が得られなかったりということもあります。

湯沸かし器はガス管に接続することでお湯を沸かすことができる小型の給湯器で、一般家庭ではキッチンでお湯を使いたいときに設置することが多いです。一方で給湯器は家全体で使うお湯を供給するための設備で、ガスで沸かすものの他に電気で沸かすタイプもあり、ほとんどの場合、設備は大型のため屋外に設置されます。

メリットとデメリット

湯沸かし器にも給湯器にもそれぞれメリットとデメリットがあります。

湯沸かし器は小型の給湯器なので家全体で使うお湯をまかなうのは現実的ではありません。無理にたくさんのお湯を沸かそうとすると、不完全燃焼によって一酸化炭素が多く発生するリスクがあり、最悪の場合には不幸な事故につながってしまう可能性もあります。

一方で小型なので特に大きな工事も必要なく本体と工事費合わせて3万円程度から取り付けできるため、初期費用を抑えたい方や大きな給湯器を導入するのが難しい場合にはおすすめです。

給湯器は家全体で必要なお湯を沸かせるだけでなく、設備によっては浴室乾燥機能や床暖房機能、入浴時の追い炊き機能を兼ね備えているため、用途に合わせて選択できます。しかしその分、設備が大きく、価格も高価で、設置工事も大掛かりなものになってしまいます。また、メーカー別だったり同一メーカーのグレード違いだったりと、製品における特長や機能差が大きいためどの製品がよいのかを選定することが難しいです。

お湯を沸かす機能を持った設備としては似た製品ですが、湯沸し器と給湯器は対応している機能や価格帯、設置できる場所などが大きく異なる製品ですので、住居のタイプや用途に合わせて適切なものを選択する必要があります。

2.湯沸かし器を選ぶときの注意点

次に、湯沸かし器を選ぶときに注意しておくべきポイントについて解説していきます。きちんと確認しないと実際にお湯を使いたいときに給湯能力が足りていなかったり、最悪の場合には使えずに再度交換するはめになったりする可能性もありますので、きちんと確認しましょう。

安全性能

湯沸かし器はガスを燃焼させる際に一酸化炭素を発生させます。これは最悪の場合、死に至るような事故につながる可能性があるため、販売しているメーカーも、換気扇をつけたり窓を開けたりと、必ず十分な換気を行うように念押しをしています。

不幸な事故が発生することを防ぐために、湯沸かし器本体にさまざまな安全装置が搭載されています。例えば、不完全燃焼を検知すると自動的に作動を停止したり、連続して不完全燃焼が継続する場合には設備に異常があると検知して再度点火するのを防止したりする機能が付属しています。

また、一定時間以上点火が続いている場合には、消し忘れと判断して消化する「消し忘れ防止装置」や、「立ち消え安全装置」、設備内部の温度が異常に高くなった場合にガスを遮断する「過熱防止装置」なども安全装置として備えられている機器があります。

利用者が注意をしながら使用することが大前提ではありますが、お子さんが利用する場合など、注意するだけでは防ぎ切れない予想を超えた事故もあり得ます。万が一の事故を防ぐためにも、できる限り多くの安全装置が付いているものを選択すると良いでしょう。また、利用年数が長くなっている機器の場合には最近のものに比べると搭載している安全機能が少ない場合があります。湯沸かし器の標準使用期間は10年とされていますので、故障をしていなくても、時期を見て買い替えをおすすめします。

操作性

主要メーカーが発売している湯沸かし器の操作方法に、メーカー別で大きな差はありません。お湯を使用したいときには湯沸かし器本体の正面にあるボタンを押し込むことで点火させ、温度は押し込んだボタンを回すことで調整します。

また、中にはこのボタンとは別で能力を切り替えるレバーがついているものもあります。季節によって必要なお湯の温度は異なりますので、このように調節幅が広いものは嬉しいですね。
少し古いタイプはボタンを押し込んでも点火できないときがあるなど使い勝手が悪い製品もありましたが、現在は改善されています。加えて、お湯を出していないときでも、ガスの点火や湯沸かし器に異常があるかどうかをランプで確認できるようになりました。

給湯能力

たくさんのお湯が一度に必要な場合には、給湯能力に着目する必要があります。一般的に温度が低いほど一度にたくさんの湯量を確保できますし、温度が高いほど供給可能な湯量は減っていきます。

また、給湯能力は外気温によって大きく変わりますので気温の高い夏であれば高くなり、気温が低い冬であれば能力は下がってしまいます。どの時期にどれくらいの温度での給湯能力が1分間当たりに何リットル程度必要なのかという点に着目して選択することをおすすめします。もし給湯能力が用途に対して不足している場合には、湯沸かし器ではなく給湯器の導入も選択肢に入れるといいでしょう。

あまり事例は多くありませんが、見落としがちなのが最低動作水圧です。一戸建てで公共の水道を使用している場合には問題ありませんが、高層階に設置する場合や自分で井戸水などを引いている場合には注意が必要です。設備が設定している最低動作水圧を満足していないと着火せずお湯が使えません。普段から水道の水圧が弱いと感じている場合には、設置の相談を専門業者とする際に、確認しておきましょう。

先止め式と元止め式

湯沸かし器には先止め式と元止め式という二種類があります。

一般家庭で主に利用されているのが「元止め式」。止水バルブがガスに点火し水を温める熱源よりも水道の元栓側にあるタイプです。給湯する際には、水道から湯沸かし器本体を通り、お湯が出ます。お湯の出口は1カ所のみで、2カ所以上に分岐させることはできません。

一方で「先止め式」は、止水バルブが熱源よりも蛇口に近い場所にあるため、バルブで調整しているのは既に沸かしたお湯です。「元止め式」とは異なり、複数のお湯の出口を設けることができます。会社や美容院などで主に利用されています。

どちらが求めている用途に合うのかは、できれば施工してくれる専門家に相談して決めたほうがいいでしょう。

ガスのタイプ

使用しているガスのタイプは地域や住宅によって大きくプロパンガス(LPガス)と都市ガスに分かれています。湯沸かし器はガスの種類によって製品が異なりますので、製品購入前にどちらの対応なのかはきちんと確認しましょう。間違ったものを購入し、気づかないまま使用してしまうと、最悪の場合には事故につながる危険性があります。もし自宅のガスがどちらかわからない場合には、戸建てであれば自宅の横に、集合住宅であれば住宅の横に大きなガスボンベが設置されていればプロパンガスです。心配な場合には、ガス会社に確認したりガス機器を設置してくれる専門業者に確認したりしましょう。

寒冷地仕様と通常仕様

湯沸かし器の中には使用していないときに内部の水が凍って使えなくならないような機能が搭載されている製品があります。寒冷地仕様として販売されており、コンセントを接続すると、湯沸かし器の内部に搭載されている凍結予防ヒーターが温められ、凍結を防止します。これで水が氷る心配はありませんが、電気代がかかってしまうので寒冷地仕様が必要でない地域の場合には、通常仕様を選択するのが一般的です。

環境性能

2006年度に省エネ基準が設定されました。各メーカーは植林を進めたり、製造中の二酸化炭素排出量を減らしたりと製品以外でも環境改善の取り組みを進めています。

熱効率の項目やエネルギー消費効率は実際に燃焼したガスのうち、どの程度が水を温めることに使われているかという比率で、高い方がガスを無駄にしていないということです。

また、ガスに関して着目するだけではなくどの程度の水を無駄にしてしまっているかという点も意識したいポイントです。最近はお湯が出てくるまでに捨てることになってしまう水の量が減るような改良が施されていますので、古い製品に比べて確実に環境性能が向上しています。

製品の性能や価格面でそれほど差がない場合には、このような観点でメーカーを選択してもよいでしょう。

2006年以前に購入した製品を現在も継続している場合には、新しい製品に取り換えることが環境に対しては良い影響を与える行動といえます。

価格

購入するものを選定する上で価格は重要なポイントです。しかし、湯沸かし器に限っては各社メーカーごとの性能差に加えて価格差もほとんどありません。

3.メーカー別の特徴

湯沸かし器を扱っているメーカーは複数あります。代表的なものでは、ノーリツ(ハーマン)・リンナイ・パロマが挙げられますが湯沸かし器の性能自体は各社それほど大きな差はありません。操作性自体も明らかな差はありませんので、利用者が機能や操作性を根拠に設置する湯沸かし器のメーカーを選定するのは困難です。

特に強いこだわりがない場合には、実際に工事を請け負ってくれるガス機器関連の専門家に相談してみるのが良いでしょう。家庭状況や相談したタイミングでの在庫などを踏まえ、リーズナブルで性能も十分な製品を選定し提案してくれます。

4.湯沸かし器の設置工事

湯沸かし器の設置を検討し始めたら、早いタイミングで専門家に相談することをおすすめします。メーカー別でも製品の性能にそれほど大差はありませんので、カタログを取り寄せて比較検討したとしても、どのメーカーにしたらよいのか判断がつかない場合がほとんどです。また、住宅設備の中でもガス機器は住んでいる地域や導入されているガスが都市ガスかプロパンガスか、また機器の設置場所などによって採用可能な機器が限定されてしまいます。

専門家に相談すれば、住宅を確認し状況に合わせた製品の提案や使い方の注意点などをアドバイスしてもらえるでしょう。

性能が変わらないならば価格を重視したいところですが、中には激安価格で掲示して後から追加工事分を請求する業者や、薄利多売でとにかく短時間でたくさんの対応をするために、細かな配慮がかけていたり、工事日程の調整がしにかったりする場合もあります。ガス機器の中でも湯沸かし器はメーカーが利用者に積極的な換気を呼びかけるなど、使い方を間違えると事故につながってしまう可能性の高い製品です。価格だけで判断せずに、親身に相談にのってくれる、安心して任せられる業者を選びましょう。